WTOは、一九九三年ご一月に、M(マルチラテラル)を引っくり返してW(ワールド)にしたのみのもので、原案ではMTOという名称だった。
土壇場でアメリカか、MはいやだからWにせよ(ともかく名称をかえてくれ)、と言い出したようである。
ともかく、GATTは「物」の貿易のみを扱って来た。
「サービス」の貿易、つまり、一定のサービスを何らかの形で国境を越えて提供する場合のルールづくりは、ウルグアイーラウンドにおいて、初めてなされた。
特許権や著作権等の、いわゆる知的財産権の貿第一章GA(WO)の基本枠組と問題点izp易的側面の規律も、同様にウルグアイーラウンドにおいて新たに導入されたものである。
かくて、今後はWTOという国際組織の下に、従来のGATT(それ自体もウルグアイーラウンドで改訂された。
それを新GATTと称する)と、サービス貿易協定(GATS)、そして知的財産権の貿易的側面に関する協定(TRIP)とが統合されることになった。
GATTの基本原則とGATT的プラグマティズムところで、従来のGATTは、極めて不安定な法的基盤の下に運営されて来た。
正式にGATTを批准したのは、ハイテイという国のみで、日本を含めた諸国は、GATTを暫定的に適用し続けて来ていたに過ぎない。
また、GATTは国際組織ではなく、GATT事務局というものはあっても、その組織としての運営面には、種々の制約があった。
GATTは、いわば片肺飛行を続けつつ、今日に至っていたのである。
そのためもあり、国際協定(条約)としてのGATTの運用については、杓子定規にはゆかぬ難しさがつきまとっていた。
実際の各国の貿易制限的措置についても、白黒をはっきりつけず灰色の部分を多く残すような、不明確な刻応をせざるを得なかった面が、多々あったのである。
いわゆる輸出自主規制(VRAないしVER)が、その典型である。
この点は後述する。
さて、GATTの基本原則は、以下の点にある。
GATTは自由貿易の体系であり、GATT上合法的な貿易障壁としては、原則的に関税(タリフ)のみが認められている。
原則に対する例外の多さが、GATTの基本的弱点であるが、原則は右の如きものである。
そして、数次のラウンド(多角的貿易交渉)で、各国の関税率を引き下げる努力が、着々となされて来た。
いろいろな物(産品)についての関税の高さを平均させた、いわゆる平均関税率において、日本は極めて低い率を誇っている。
むしろ、アメリカやEC(現在のEU)の方が、平均関税率において、日本よりも高いのである。
このことを忘れてはならない。
関税が原則として唯。
一の合法的な措置とされる反面で、輸出入の数量を制限する措置は原則的に禁止された。
そうであるから、輸出自主規制のGATT違反性が、たえず問題とされ、かかる灰色措置を放置してよいかが、大いに議論されて来たのである。
だが、ウルグアイーラウンドで作成された協定(新セーフガード協定)において、輸出自主規制をすることのみならず、それを求めることもまた、禁止された。
アメリカやEC(EU)が日本に対して、輸出を自主的に制限せよと求め、日本側が渋々(こそれに応ずる、といった展開が一般的だったため、その双方の行為が禁止されたことになる。
ちなみに、セーフガードとは緊急輸入制限のことであり、自由貿易を基本としつつも、海外からの輸入の急GATT(WTO)の基本枠組により自国経済秩序が大混乱をする、等の事情があれば、要件は厳格だが、セーフガード措置が認められる。
けれども、それも特定の国からの輸出を狙い打ちする形では許されず、無差別性が要求されて来た。
内国民待遇とmm国待遇この無差別性の原則は、従来からGATTの最も基本的な価値を具体化するものであった。
つまり、ある国が特定国のみを優遇することは認めない。
すべてのGATT締結国を平等に扱い、特定の国に与えらえた優遇措置は自動的に他の国々にも与えられるものとする。
その違反は、GATT違反として、GATTの紛争処理手続において処理される。
右の平等取扱のことを、最恵国待遇(MFN)と言う。
GATT上は、無条件のMFNが、基本的な要請となる。
次に、内国民待遇(NT)と言って、内国の産品と外国からのそれとを同等に取扱え、という要請も、最も基本的なGATT上の原則である。
内国民待遇は、日米友好通商航海条約等の、二国間条約でも定められているが、GATTはそれを締約国間の基本的なルールとしたのである。
最恵国待遇と内国民待遇は、前者は外・外、後者は内・外の間での無差別取扱を要求するものであり、それらは一体をなして、GATTが「機会平等主義」に立脚していることを、示している。
昨今は、「機会の平等」ではなく「結果の平等」、つまり、淑場における一定の成果(巾場シェア等)を相手国に要求する貿易政策がアメリカやEC(EU)によってとられ、日本はそうした海外からの圧力に、常にさらされている。
だが.GATTの基本は右の如きものであり、この点は、新たなWTO体制の下でも、サービスや知的財産権の領域を含め、全体を貫く基本的な要請となっている。
ウルグアイーラウンド交渉において、右の結果主義(成果重視の貿易政策)の側からの自由貿易体制に対する攻撃が、最も大きな争点となったことは、よく知られている。
更尽ラウンドと非関税障壁問題一九七〇年代に、東京で開始されたために東京ラウンドと呼ばれる、多角的貿易交渉がなされた。
それに続くのが、今回のウルグアイファウンドだと言うことになる。
東京ラウンドでは、とくに非関税障壁(ノンータリフーバリア)の問題が大きくとり上げられた。
既述の如く、GATT上合法的な貿易障壁(トレードーバリア)は、原則的に関税のみとされた。
そして、それまでのラウンドで、各国の平均関税率は、ドラマチックに低くなった。
それを前提として、各国の眼は、関税以外にも種々の貿易障壁があって、GA(WO)の自山貿易を阻害しているのではないか、という方向に移って行ったのである。
だが、この非関税障壁という言葉は、十分注意して用いなければならない丿要するに、関税以外の貿易障壁という意味だが、それがどこまでの事を指すのかが、あいまいである。
昨今の通商摩擦において、とくに日本異質論(西欧社会と日本とは異質だとする主張ないし認識)との関係で、放置すれば口本社会の伝統的なおり方や日本の文化、それに日本語まで非関税障壁だ、などとされがちな傾向にある。
「異質」と言い出したら、アメリカとドイツ、ドイツとフランス、日本と韓国、等々すべての国々が相互に異質なものを持っている。
国ごとに物の考え方が違い、社会的制度が異なることは。
当然の前提なのに、その現実に頬被りをして、非関税障壁論が一人歩きを始めているのである。
つくづく言葉の魔力はおそろしい。
非関税障壁と言えば、人々に何となく[なるほど]と思わせてしまう心理的効果が、大きく働いてしまう。
何か本当の問題なのかということを、突き詰めて考えずに、問題の入口で人々に情緒的対応をさせてしまう魔力が、非関税障壁という言葉にはあるのである。
ちなみに後述の「市場アクセス(MA)」という言葉にも、誰が開発した言葉かはいまだに分らないが、同様の魔力(人々を何となくひきつけてしまう威力)かおる。
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